No.27 
発行者:ジャパ・ベトナム事務局 
発行日:2004年 4月15日 

安藤 勇
 
 1990年代のベトナム政府の経済開放(ドイモイ)政策がすすむにつれて、ベトナムは少しずつ国際社会のルールにあわせて、国内法も整備するようになった。その中で、開発協力活動をつづける外国の市民団体の法的な環境をととのえ、活動の監督を強化しようという動きもでてきた。そして、1996年に、ヴォ・ヴァン・キエット首相は、海外からのNGOのベトナム国内での活動を規定する法律を発表した。同時に、ベトナム政府のNGOとの調整窓口となる人民支援連絡委員会(PACCOM:People's Aid Coordinating Committee)が設立された。
 去る2月5日、PACCOMの副局長、グエン・ヴァン・キエン氏の来日を受けて、家族計画国際協力財団・東京本部において、「ベトナム開発支援NGOのための合同ワークショップ」が開催され、日本のNGO十数団体を含む、30人あまりが参加した。

ベトナムにおけるNGOの現状

 最初に、グエン・ヴァン・キエン氏から、「ベトナムにおけるNGO活動と関係機関との協力について」の講演がおこなわれた。キエン氏によれば、ベトナム統一直後には、わずかな国際NGOしかなかったが、1978年には早くも、70ほどの団体が援助活動を展開していた。一番多かったのが米国からの団体で、次いで1/3はヨーロッパからの団体だった。
 1989年以降、国際NGOの数は急増して、現在、約500団体にのぼる。そのうち、日本のNGOも約40団体が、ベトナムで活動を展開している。昨年11月にハノイで、PACCOMが主催して開かれた、「貧困の根絶」をテーマにした会議にも、多くの国際NGOが参加した。ベトナム政府は、貧しい人たちへの支援活動をつづけている国際NGOの仕事を高く評価しており、NGO資料センターの設立を計画するなど、情報交換や協力関係の強化を望んでいる。同時に、ベトナム国内で活動をおこなっている国際NGOに対して、地域的な重複を避け、ベトナム政府の支援によって、より安全で効率的な活動を行うために、96年の法律に従って、ベトナム政府に正式に登録するよう、つよく求めている。(ちなみに、日本の40団体のうち、登録しているのは約半数にすぎないそうだ)
 国際機関からの委託を受けている一部の大手NGOを除いて、多くの国際NGOは、当初から貧しい地域で小規模の開発プログラムを組み、住民の自立をはかっている。その活動の成果は、特に農村で顕著だ。一方、都市部でも、路上生活をしている子どもたちやエイズ患者、セックスワーカーなどをケアするプロジェクトも、近年特に盛んになっている。その他、国際NGOは学校建設、教員養成、奨学金など教育分野のプログラムや、農村にクリニックや薬局をつくったり、ヘルスワーカーを養成するなどの医療活動にも熱心だ。
 このように、国際NGOの活動は、究極には貧困根絶を目標としている。そのなかには、政府の協力を得ておこなわれているプログラムも多くある。住民の福利を実現するのにもっとも適した方法として高い評価を受け、政府の政策のモデルに採りいれられたものもあるという。

今後のチャレンジ

 1991―2000年の10年間で、ベトナム政府のドイモイ政策が功を奏し、安定した経済成長が実現して、国内総生産が2倍になった。こうした経済実績を基盤に、今後、さまざまな形の発展が予測されるが、その裏側では、人口の急増や農村から都市への住民移動、貧富の格差の増大、学校や教員の不足、幼児の栄養失調など、さまざまな問題が懸念されている。ベトナム政府は自国の対外イメージをたかめようと努力しており、国連が定めている人間開発指数(HDI/その国の国民がどれだけ人間的に暮らしているかを、保健衛生や教育などのさまざまな指標で評価する)を上げるために、懸命に努力している。
 今回のフォーラムで、PACCOM関係者は日本のNGOの活動を大いに歓迎した。今後、少数民族の環境改善や、麻薬依存者・売春従事者・HIV感染者のケア、経済弱者である都市・農村の貧困層への支援が、特に望まれる。
 ベトナムは、今後も国際NGOの活動に、おおきな期待を抱いている。





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