[2007ツアー]ホーチミン1日スタディーツアーに参加して / チャオ・ベトナム No.35
発行者:ジャパ・ベトナム事務局 発行日:2008年4月5日

大川 美帆子 
 ホーチミンのローカルNGOでボランティアスタッフをしていますが、当団体で里親になってくださっている古川しげみさんとJAPAベトナムの柴田さんのご好意で、ホーチミン市内にて1日スタディツアーに参加させていただきました。ホーチミンではNGOの横のつながりが乏しいため、今回、他の活動の場を訪問する機会をいただき、非常に勉強になりました。
 朝、車で向かった先は、私がアルバイトに行く途中に通っている道でした。その道から歩いて細い路地を入ると、そこは奥の奥まで広がり、人々が近所の人ともに生活している空間でした。貯金グループの井戸端会議の場に入れてもらい、コーヒーをご馳走になりました。笑い声が絶えず、特に貯金グループのリーダーは、ベトナム人にしては少数派といえる、体格のよい元気なおばさん。しかし、再開発地域に指定され、立ち退きを迫られているエリアだとのこと。引越しの手当ては政府から出るけれど、十分な額ではなく、引越し先は皆ばらばらで、解散してしまうことになるそうです。家の多くは隣家と壁が接して建てられていますが、既に引っ越していった家は取り壊され、階段の跡や残していった不用品が見える瓦礫の山と化し、奇妙な空間を作り出していました。


 ホーチミンに住み、開発と発展の波は日々感じていますが、実際にそれによるマイナスの波を物理的に受けてしまっている人たちのお宅を訪ねるのは初めてでした。全て取り残されるのもそう遠くない話だと聞き、都市の発展と引き換えに人々が失うもの、特にベトナム人の特長である他人への面倒見のよさが、都会のそっけない人間関係へと姿を変えていくとしたら、あまりに大きい損失だと感じました。
 皆で輪になり、床に座ってお話を聞きました。このグループには、紹介されてくる人が多いとのこと。中には、適切な薬を服用するようになってから、体調がずいぶん回復したという人が何人もいたこと、また仲間で共感しあえる存在ができたことが、彼らを強くし、元気にしてきたということが分かりました。
 途中、2日前に刑務所から出所し、母親にこの施設へ連れてこられたという20代前半の男性が部屋に来てくれ、しばらく質問に答えてくれました。くぼんだ頬と目、ぼぅっとした表情に、体を起こしているのもやっとというやせ細った体。タイルの床にしゃがんでいるのも痛々しいほどで、病院にいかないのかと聞いたところ、拒否したと答え、病院に入院すると、管理のため手錠で拘束されてしまうので、このグループを訪ねてきたのだとのこと。このまだ若い男性が、グループの仲間達と適切な薬により、何とか体力を回復して欲しいと願うばかりでした。
 表向きは目覚しい発展を続けるベトナム、しかし広がる経済格差、深刻な環境汚染、モラル向上の遅れなど、数々の問題と矛盾を抱えています。発展の波に乗った人は、高価なバイクに乗り、高級なレストランで悠々と食事をしている一方で、同じこの街で様々な理由から弱い立場になってしまった人たちが暮らしている事実。今同じ街にいる私がどう支援していけるのか、改めて考えさせられた1日でした。







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